「あーそうだ。コレが本物のモンタージュ写真の記事。」
「そしてコイツこそが3億円事件の真犯人だ!」
ウクドナルドが持っていた3億円事件の記事には髪の毛からひげ、眉毛までもが白く染まった一人の老人が写っていた。
そう・・・俺が練習場で出会った・・・
小柄なおじさんだ!
ウクドナルドは写真を見て驚く俺から記事を取り上げ、まじまじと見つめながら言った。
「ヤツの仕業に違いないんだが、どう言う訳か発行された翌日にブラザーも良く知っている偽のモンタージュ写真の記事にすり替わっちまったんだ。そして、日本国民の記憶もこの本物の記事と共になぜか偽の記憶にすり替わっちまったんだ。」
ウクドナルドはそう言って出て来たばかりのトマトジュースを再び一気に飲み干した。
「コイツの名前はウクーネル・サンダース。」
「ブラザー。お前が練習場で会ったっていう男もコイツだろ?」
「あ・あぁ・・・。確かにこのおじさんだ・・・。だ・だけど・・ちょっと待ってくれよ!だいたい、おかしいんじゃないか!?だってコレって半世紀も前の写真だろ!?俺が会った時と全く人相が変わってないぜ!?」
「あーそうだなブラザー。正確に言うとお前が会ったのはコイツじゃねー。」
「コイツのDNAを組み込まれて作られた半サイボーグクローン人間だろうな。おそらくブラザーが練習場で会ったっていう小柄なジジィは工作員専用の小型クローンだ。オリジナルのコイツは身長180cm以上、体重は90kgもある大男だからなぁ。」
俺は現実離れした話に頭が混乱してきた。
「ヤツは3億円事件で奪った金を使って海の向こう、アメリカのケンタッキー州にある鶏肉チェーン店の会長の座を手に入れ、その会社を隠れ蓑に白の軍団という組織を結成し半サイボーグクローン兵を大量生産しだしたってわけさ。」
「しかも、コイツは自分自身にもクローン技術を応用し、昭和から平成に変わった今の世もなおクローン兵を率いて生き続けているんだ。」
「何なんだよクローンって!そんな話があるわけねーだろ!」
「いやブラザー。信じるも信じないも、おそらくお前はもう奴らに狙われちまってるぜ・・・。」
「はぁ?どうして俺がそんな訳の分からない奴らから狙われなきゃイケないんだよ!」
なぜかウクドナルドは最近ラウンドに行った時の写真が無いかと聞いてきたので、スマホのギャラリーを開きウクドナルドに手渡した。
スゴい速さで次々と写真をめくり続けたウクドナルドだが突然 動きがピッタッと止まったかと思えば今度は一転、まるで石像のように動かなくなった。
「やっぱりな・・・。」
ウクドナルドは俺に最近、ゴルフのスコアが伸び悩んでるんじゃないかと聞いて来た。
「あぁ、確かにOBは出るしアイアンもダフったりで・・・」
「だろうな・・・。ちょっと、これを見てみろよブラザー。」
「!!!!」
「なっ!!なんだこれっ!!」
バードウィングで左に引っ掛けた時も、白山ヴィレッジで左にOBした時も白髪の老人が写真に写り込んでいた。
「ブラザー。おそらくお前のOBのほとんどはコイツらの仕業だ。誰も見ていない隙にOB杭の外までブラザーのボールを動かしてやがるんだ。」
「そ・・・そんな・・・だから俺のスコアはなかなか縮まらなかったのか!!」
「あぁ。奴らクローン兵にゴルフのマナーを守るというプログラムはインプットされていないからな。」
ゴルフを愛する俺の心の中に突然なんとも言えない怒りがわき上がって来た。
「なぁウクドナルド・・・。今の話は全て本当の話なんだよな・・?」
「あぁ本当だ。ブラザーお前のスコアが良くならないのは・・・」
ウクーネル・サンダースの仕業だ!
白い影 完 。